こんな方におすすめ
- 車中泊・アウトドアに興味がある人
- 車を日常的に使っている人
- 防災を「買っただけ」で終わらせている人
「災害が起きたら、とりあえず家にいれば安全」
この考え方は、多くの人にとって疑う余地のない“常識”かもしれません。確かに、普段の生活において家は最も安心できる場所であり、雨風をしのぎ、眠り、家族と過ごす空間です。
しかし、災害という非日常が起きた瞬間、その“常識”は簡単に裏切られます。地震で揺れ続ける家、水が迫ってくる床、割れるガラス、止まる電気と水。家は一気に「守ってくれる場所」から「動けない箱」へと変わります。
一方で、近年少しずつ語られるようになったのが「車での避難」という選択肢です。車中泊やアウトドア経験者、防災意識の高い人たちの間では、車を単なる移動手段ではなく「避難空間」として捉える考え方が広がっています。
この記事では、「家か車か」という単純な二択を提示するつもりはありません。大切なのは、状況に応じて選べることです。
そのために、あえて「家より車の方が安全になるケース」を深く掘り下げていきます。
災害時、家が一気に「危険な場所」に変わる瞬間
家が危険になる最大の理由は、家が「動かない」ことです。これは平常時にはメリットですが、災害時には致命的な欠点になります。
地震を例に考えてみましょう。強い揺れが起きた瞬間、家具は倒れ、棚の物は落下し、ガラスは割れます。耐震基準を満たしていない家屋では、建物そのものが傾いたり、最悪の場合は倒壊します。さらに厄介なのは、揺れが一度で終わらないことです。余震が続く中、家の中に留まり続けることは、肉体的にも精神的にも大きな負担になります。
水害の場合はさらに分かりやすいでしょう。川沿いや低地にある住宅では、水は想像以上のスピードで押し寄せます。「まだ大丈夫」「もう少し様子を見よう」と判断を遅らせた結果、家が完全に浸水し、逃げ道を失うケースは決して珍しくありません。家は浮かびませんし、高台へ勝手に移動してくれるわけでもありません。
台風や強風災害では、屋根の破損や飛来物による窓ガラスの破壊が起こります。ガラスが割れた瞬間、家の中は安全な空間ではなくなります。外よりはマシ、という程度の話であって、「安心できる場所」とは言えません。
火災も同様です。地震後の火災、密集地での延焼では、家に留まる判断が命取りになることがあります。煙は一瞬で充満し、視界と呼吸を奪います。
これらの災害に共通するのは、「家が安全かどうかは、家そのものより立地と状況に左右される」という事実です。
家=安全という思い込みは、判断を遅らせ、行動の選択肢を奪います。
特定の条件下では「車」が家より安全になる理由
車が安全になる最大の理由は、「動ける」ことです。これは非常に単純で、同時に非常に強力な要素です。
地震直後、余震が続く状況では、建物内にいること自体が恐怖になります。車は倒壊することがなく、頭上から物が落ちてくる心配もありません。揺れそのものは感じますが、「閉じ込められる」「押し潰される」という不安が大幅に軽減されます。この心理的安定は、災害時には想像以上に重要です。
水害の可能性がある場合、車の価値はさらに高まります。水が来る前に移動できれば、それだけで危険を回避できます。家に留まる選択肢しかない人と、早期に高台へ移動できる人では、生存率に明確な差が出ます。
停電や断水が長引いた場合も、車は大きな助けになります。エンジンをかければ充電ができ、ラジオやスマートフォンで情報を得られます。夏や冬であれば、空調が使えるかどうかは命に直結します。
さらに、避難所の問題も無視できません。避難所が満杯、環境が合わない、プライバシーが確保できない。こうした理由で避難所を避ける人は少なくありません。車は完全ではありませんが、「自分の空間」を確保できるという意味で、非常に現実的な選択肢になります。
重要なのは、車が万能だから安全なのではありません。
選択肢を増やせるから安全になるのです。
車中泊経験者が災害に強い本当の理由
車の防災力は、装備より「経験」で決まります。車中泊経験者が災害時に強いのは、特別な知識があるからではありません。「車内で生活する感覚」を知っているからです。
車内で寝る、食べる、休む。この一連の行動を経験しているかどうかで、災害時の対応力は大きく変わります。初めての車内避難では、寝にくさ、寒さ、暑さ、トイレの問題など、あらゆることがストレスになります。しかし、慣れている人は「こうすれば何とかなる」という感覚を持っています。
防災グッズを買って満足してしまう人が多いのも事実です。しかし、使ったことのない道具は、非常時には使えません。車中泊経験は、そのまま防災訓練になります。日常で使っている毛布やランタン、モバイルバッテリーは、非常時にも迷わず使えます。
防災で最も危険なのは、「正解を知っているつもり」になることです。実際にやったことがあるかどうか。この差は、災害時には致命的になります。
「車なら安全」という誤解と、本当に必要な条件
ここで強調しておきたいのは、「車なら安全」という考え方もまた危険だということです。車避難には明確なリスクがあります。
津波エリアでは、車避難は非常に危険です。渋滞に巻き込まれれば、逃げる手段を失います。冠水した道路に進入すれば、車は簡単に動かなくなります。
夏や冬の車内温度も深刻な問題です。エンジンを止めた車内は、短時間で危険な温度になります。ガソリン残量が少なければ、空調も使えません。
だからこそ、車避難を「安全な選択」にするための条件が重要になります。
・ガソリンは常に半分以上
・ハザードマップを把握している
・普段から短時間でも車内で過ごす経験がある
これらが揃って初めて、車は家に代わる選択肢になります。
まとめ
-
家は常に安全ではない
-
車も万能ではない
-
生き残る人は「選択肢を持っている人」
防災に正解はありません。
しかし、考えずに決めつけることは、最も危険な選択です。