こんな方におすすめ
- 災害時に車中泊避難を考えている人
- 車さえあれば避難生活を乗り切れると思っている人
- 地震や豪雨のあと数日間、車で生活する可能性がある人
災害時の車中泊対策というと、
水を積む。
食料を積む。
モバイルバッテリーを用意する。
毛布を入れる。
簡易トイレを積む。
といった「物」の準備に意識が向きやすくなります。
もちろん、どれも重要です。
ただ、実際に車内で何日か過ごすことを考えると、もう一つ見落としやすい問題があります。
それが、
「ちゃんと眠れるのか」
ということです。
普段の車中泊なら、一晩あまり眠れなくても翌日に帰宅できます。
ホテルへ移動することもできます。
予定を変更して昼寝することもできます。
しかし災害時は違います。
翌朝になっても、
余震が続いている。
道路状況を確認しなければならない。
避難情報を確認する。
水や食料を確保する。
家の状況を見に行くか判断する。
家族と連絡を取る。
車を移動させるか決める。
次々に判断を求められます。
そんな状況で一晩ほとんど眠れなければ、翌日の避難生活そのものがつらくなります。
さらに二晩、三晩と睡眠不足が続けば、疲労も積み重なります。
「2日目」といっても、必ず2日目から判断力が急激に落ちるという意味ではありません。
重要なのは、
災害初日の緊張が少し切れた頃から、睡眠不足や疲労が表面化しやすくなる
という視点です。
今回は、災害時の車中泊で「寝られること」を防災装備の一つとして考えてみます。
車の中に横になれる場所があっても「眠れる」とは限らない
車中泊用に座席を倒す。
マットを敷く。
寝袋を用意する。
これで寝床は完成したように見えます。
しかし、
横になれること。
眠れること。
身体を休ませられること。
この3つは同じではありません。
災害時には普段の車中泊とは違う条件が重なります。
雨が車体を叩く。
強風で車が揺れる。
周囲の車が出入りする。
人が歩いている。
ドアの開閉音がする。
スマートフォンの緊急通知が鳴る。
余震がある。
外の状況が気になる。
こうした状態では、身体を横にしていても頭が休まらないことがあります。
さらに駐車場所によっては照明が一晩中明るい場合もあります。
逆に暗すぎれば、防犯面が気になります。
隣の車との距離が近ければ、人の声やエンジン音も聞こえてきます。
つまり、
「フルフラットにできる車だから大丈夫」
だけでは不十分です。
普段のキャンプでは静かな場所を選べても、避難時には駐車場所を自由に選べない可能性があります。
その環境でも少しでも休めるよう、
アイマスク。
耳栓。
クッション。
身体の凹凸を減らすマット。
季節に応じた寝具。
などを用意しておく。
こうした物は水や食料ほど「防災用品らしく」見えません。
しかし数日間を車で過ごすことを考えると、休息を確保する道具も重要な装備になります。
本当にきつくなるのは「眠れなかった翌日」に判断し続けること
災害直後は緊張しています。
そのため最初の夜は、
眠れなくても仕方がない。
少しくらい寝なくても大丈夫。
と思うかもしれません。
問題は翌日です。
朝になれば、
この場所に残るのか。
別の場所へ移動するのか。
自宅へ戻れるのか。
ガソリンを入れに行くのか。
食料を探しに行くのか。
避難所へ行くのか。
仕事や学校はどうなるのか。
さまざまな判断が必要になります。
睡眠不足になると、日中の眠気や疲労だけでなく、注意力や判断力の低下につながることが
厚生労働省の睡眠ガイドでも示されています。
災害時には、この影響が特に厄介です。
普段なら多少ぼんやりしていても、
自宅で休む。
予定を延期する。
誰かに任せる。
という選択ができます。
避難中はそうはいきません。
自分で車を運転しなければならないこともあります。
知らない道を走る可能性もあります。
冠水や落下物、渋滞など、通常より道路状況が悪い場合もあります。
つまり、
睡眠不足の状態で、普段より難しい判断をしなければならない
ということです。
災害時の車中泊では、
「一晩を車で乗り切れるか」
ではなく、
「翌日も安全に行動できるくらい休めるか」
まで考える必要があります。
夜中に何度も起きる原因を先に減らしておく
車中泊で睡眠時間を確保するためには、寝具だけでは足りません。
夜中に起きる原因を減らすことも大切です。
例えば、
寒い。
暑い。
トイレへ行きたい。
スマートフォンの電池が気になる。
外から車内が見える。
荷物が邪魔。
身体が痛い。
周囲の音が気になる。
こうした小さな問題です。
一つだけなら我慢できても、何度も重なると眠れません。
特に災害時は、
「トイレへ行きたいけれど、外へ出るのが面倒」
という問題が起こります。
雨。
寒さ。
暗さ。
トイレまでの距離。
混雑。
夜間の安全。
これらが重なると、水分を控えたくなる人もいるかもしれません。
しかし、水分を極端に控える方向で問題を解決するのは適切ではありません。
むしろ、
トイレの場所を確認する。
携帯トイレを準備する。
夜間用のライトを置く。
靴をすぐ履ける場所に置く。
というように、起きたときすぐ行動できる形を作ります。
またスマートフォンやライトなど、夜中に使う物は一か所にまとめておく。
車の鍵も決まった位置へ置く。
必要な物を探すために車内をひっくり返さなくて済むようにする。
「眠るための装備」というと枕や寝袋を考えますが、
実際には夜中の小さなストレスを減らす車内配置
も睡眠環境の一部です。
家族で車中泊するなら「全員が同じ時間に眠れる」と考えない
一人の車中泊と家族の車中泊では難易度が大きく変わります。
大人2人。
子ども。
高齢者。
ペット。
人数が増えるほど、車内の条件は複雑になります。
誰かがトイレへ行く。
誰かが暑い。
誰かが寒い。
子どもが起きる。
寝返りを打つ。
ドアを開ける。
一人が動けば、他の人も起きてしまうことがあります。
さらに車内の荷物も増えます。
食料。
水。
衣類。
防災用品。
ペット用品。
普段から積んでいる荷物。
これらを積んだまま家族全員が寝るスペースを作ろうとすると、想像以上に狭くなることがあります。
そこで平常時に一度、
家族全員で実際に車内へ横になってみる
ことには意味があります。
キャンプ場まで行く必要はありません。
自宅の駐車場でも構いません。
座席を倒す。
荷物を置く。
全員で横になる。
ドアを閉める。
この状態を作るだけでも、
足が伸ばせない。
荷物の置き場所がない。
一人が外へ出るには全員起きなければならない。
という問題が見えてきます。
災害が起きてから初めて寝方を考えるより、平常時に一度試しておく方が修正できます。
防災用車中泊では、
「何人乗れる車か」
ではなく、
「何人が休める車か」
で考えた方が現実に近くなります。
眠れない日が続くなら「車中泊を続けること」自体を見直す
車中泊避難を始めたからといって、その後もずっと車で過ごさなければならないわけではありません。
初日は車が最も安心できた。
しかし翌日になって避難所の環境が整った。
親族宅へ移動できるようになった。
別の安全な宿泊場所が確保できた。
状況が変われば、避難方法も変えて構いません。
特に、
ほとんど眠れない。
身体が痛い。
暑さや寒さに耐えにくい。
トイレへ行くのが難しい。
子どもが休めない。
という状態が続いているなら、
「車中泊を続けること」が目的になっていないか
を考える必要があります。
災害時に重要なのは、
車で何泊できたか
ではありません。
身体を休ませ、安全に次の行動を取れる状態を維持することです。
車中泊が快適だったとしても、身体を動かさず長時間同じ姿勢で過ごすことには注意が必要です。
内閣府も、在宅・車中泊避難者を含めた避難生活支援を想定しています。
つまり、
避難所に入らなかったら支援と無関係になる
という考え方ではありません。
自治体などから提供される情報を確認しながら、必要に応じて避難先や過ごし方を切り替えていく。
車中泊は「最終目的地」ではなく、状況に合わせて使う避難手段の一つとして考える方が安全です。
まとめ|防災用品の中に「休める仕組み」も入れておく
災害への備えでは、
何日分の水を積むか。
何食用意するか。
バッテリー容量をどこまで増やすか。
といった数字に目が向きやすくなります。
しかし避難生活を実際に続けるのは人間です。
身体も疲れます。
緊張も続きます。
昼間には何度も判断を求められます。
だからこそ、防災用の車を作るなら物資を詰め込むだけで終わらせず、
「ここで身体を休ませられるか」
まで確認しておきたいところです。
一晩目を乗り切るだけなら勢いでも何とかなるかもしれません。
本当に差が出るのは、その次の日です。
朝になったとき、
頭が働く。
身体が動く。
周囲を確認できる。
必要なら安全に移動できる。
その状態を残すことも立派な防災です。
災害時の車中泊で必要なのは、豪華な寝室ではありません。
次の日にもう一度、安全な判断ができる程度に休める場所です。