こんな方におすすめ
- 災害用の飲料水は備蓄しているが、トイレ対策まではしていない人
- 断水しても浴槽の水でトイレを流せばいいと思っている人
- 食料や水以外の「生活するための備蓄」を考えたい人
災害への備えというと、最初に思い浮かぶのは水と食料です。
ペットボトルの水。
缶詰。
レトルト食品。
カセットコンロ。
こうしたものを備蓄している家庭は少なくないでしょう。
ところが実際に断水すると、飲み水と同じくらい、あるいは生活上ではそれ以上に早く困る可能性があるものがあります。
それがトイレです。
人は食事を多少減らすことはできます。
しかしトイレは、
「今日は災害だから使わない」
というわけにはいきません。
しかも一人だけではありません。
家族4人なら4人分。
朝だけではありません。
昼も夜も使います。
例えば1人が1日5回使うと考えれば、
1人で1日5回。
家族4人なら1日20回。
3日間なら60回。
1週間なら140回。
という数になります。
携帯トイレを10回分だけ買って、
「防災用トイレは準備した」
と思っていても、家族で使えば半日程度でなくなる可能性があります。
さらに地震では、
水が出ない
だけが問題ではありません。
排水管や下水道が壊れていれば、便器に水を入れて無理に流すことで別の問題を起こす可能性もあります。
今回は、災害時の備蓄で見落とされやすい「トイレ」を、家族人数と使用回数から考えてみます。
トイレは1人分ではなく「人数×回数」で考える
災害用トイレを購入するとき、
10回分。
20回分。
50回分。
という表記を見かけます。
数字だけ見ると、
「50回分もあれば十分だろう」
と思うかもしれません。
しかし重要なのは、何人で使うのかです。
横浜市では、災害時のトイレパックについて、
1人あたり最低15回分、3日分
を一つの備蓄目安としています。
つまり、1日あたり約5回です。
これを家族人数で計算すると、必要数の見え方が一気に変わります。
1人暮らしなら、
1日5回
3日15回
7日35回
2人なら、
1日10回
3日30回
7日70回
4人家族なら、
1日20回
3日60回
7日140回
です。
家族4人で携帯トイレ50回分を用意していても、単純計算では3日分に届きません。
さらに、
トイレが近い人。
高齢者。
子ども。
体調不良。
薬を服用している人。
などがいれば使用回数が増える可能性もあります。
つまり、
「携帯トイレを持っているか」
ではなく、
「この箱で家族が何日生活できるのか」
まで確認する必要があります。
食料なら、
4人家族だから4食必要
と考えやすいのに、トイレになると一箱購入しただけで安心してしまいがちです。
防災用品として考えるなら、箱の大きさではなく、
人数 × 1日の使用回数 × 想定日数
で計算する方が実際の生活に近くなります。
断水したら「浴槽の水で流せばいい」とは限らない
断水対策として、
「お風呂の水を残しておけばトイレに使える」
という話を聞くことがあります。
確かに、状況によっては生活用水として使える場合があります。
ただし地震直後などは、
水さえあれば便器へ流していい
とは限りません。
地震によって、
建物内部の排水管。
敷地内の下水管。
道路下の下水道。
などが損傷している可能性があるからです。
特に集合住宅では注意が必要です。
上の階から流した汚水が正常に排水されず、下の階で逆流する可能性があります。
自分の部屋では何も起きていなくても、建物全体の排水設備が無事かどうかは別問題です。
そのため大きな地震の直後は、
「水道が止まったからバケツで流そう」
とすぐ判断するのではなく、管理会社や自治体などから排水設備の安全確認に関する情報を確認した方がいいでしょう。
ここで役立つのが携帯トイレです。
便器へ袋を取り付ける。
その中で用を足す。
凝固剤などで処理する。
つまり、
下水へ流さずにトイレを使う
ことができます。
これは単なる「水の節約」ではありません。
排水設備が使えるか分からない段階でも、便器を生活空間として利用できる方法です。
断水対策というより、
上下水道が正常か分からない時間を乗り切る装備
として考えた方が分かりやすいでしょう。
携帯トイレは「買っただけ」では使えないこともある
防災用品として携帯トイレを購入しても、箱を開けずに押し入れへ入れたままになっていることがあります。
しかし実際に使う状況では、
便器へどう取り付けるのか。
袋は何枚使うのか。
凝固剤をいつ入れるのか。
使用後の袋をどう閉じるのか。
どこへ置くのか。
といった作業が発生します。
停電している夜かもしれません。
家の中が散乱しているかもしれません。
子どもがトイレへ行きたいと言っているかもしれません。
そんな状況で初めて説明書を読むのは大変です。
そこで一度、平常時に袋だけでも便器へ取り付けてみます。
実際に使用する必要はありません。
便座を上げる。
袋を取り付ける。
便座を戻す。
使用後にどう取り出すか確認する。
ここまで試すだけでも使い方が分かります。
また見落としやすいのが、
使用済みトイレの保管場所
です。
1人5回。
家族4人なら20回。
一日だけでも20個前後の処理済み袋が発生する計算になります。
3日なら60個です。
これをどこに置くのか。
ベランダなのか。
屋外の保管場所なのか。
密閉容器を使うのか。
臭い対策をどうするのか。
ごみとしてどう出すのか。
ここまで考えて初めて、災害用トイレの準備になります。
処分方法については自治体によって扱いが異なるため、平常時に地域のルールを確認しておくことも必要です。
トイレ本体だけではなく、
袋。
凝固剤。
トイレットペーパー。
消臭袋。
手袋。
ウェットティッシュ。
手指衛生用品。
などをまとめて置いておけば、断水時にも使いやすくなります。
トイレを我慢する生活にしない
災害時にトイレが使いにくくなると、
なるべくトイレへ行かないようにしよう
と考えてしまうことがあります。
そこで水分を飲む量まで減らしてしまう。
これは避けたいところです。
避難所でも在宅避難でも、
トイレが遠い。
汚れている。
夜は怖い。
行列ができている。
断水している。
という理由からトイレを控えようとすることがあります。
しかしトイレ問題は、
「少し我慢すればいい」
で処理するものではありません。
だからこそ、災害用トイレを十分な数備蓄しておく意味があります。
自宅で便器そのものが壊れていなければ、携帯トイレを設置することで普段に近い姿勢で使用できます。
夜間に外へ出る必要も減らせます。
高齢者や子どもにとっても、慣れた自宅のトイレを使える方が負担を小さくできる場合があります。
防災用品というと、
命を守る道具
に意識が集中します。
しかし避難生活が数日続けば、
普通に排泄できる環境
も生活を維持するための重要な条件です。
「食べ物はある」
「飲み水もある」
でも、
トイレへ行くたびに困る。
これでは在宅避難を続けること自体が苦痛になります。
災害時の生活を考えるなら、食料と水だけではなく、
食べる。
飲む。
排泄する。
眠る。
この一連の生活ができる状態を準備しておく必要があります。
水・食料と同じように「1週間分」を一度計算してみる
内閣府は、防災週間の呼びかけでも、
食料。
飲料水。
携帯トイレ・簡易トイレ。
トイレットペーパー。
などについて、最低3日分、できれば1週間程度の備蓄を挙げています。
そこで一度、自宅の人数で1週間分を計算してみます。
例えば4人家族なら、
5回 × 4人 × 7日
で、
140回分。
数字だけを見ると、
「そんなに必要なのか」
と感じるかもしれません。
しかし一週間生活するなら、その程度の排泄回数になる可能性があります。
もちろん実際の使用回数には個人差があります。
それでも、
10回分を一箱だけ
と、
100回以上を想定している
のでは準備の考え方が全く違います。
また全部を一度に購入する必要はありません。
まず3日分。
次に数十回分追加。
さらに家族構成に合わせて増やす。
という形でも構いません。
保管場所を分散する方法もあります。
自宅のトイレ。
防災収納。
車。
非常持ち出し袋。
すべてを一か所に置かなければ、地震で収納が開かなくなった場合にも対応しやすくなります。
そして定期的に、
家族が増えた。
子どもが成長した。
高齢の家族と暮らすようになった。
引っ越した。
という変化に合わせて見直します。
防災備蓄のトイレは、
「何個買えば正解か」
ではなく、
自宅で何日生活したいか
から逆算する。
その方が必要量を考えやすくなります。
まとめ|断水対策は「飲める水の量」だけで終わらせない
災害用の水を何リットル備蓄するか。
これは比較的よく考えられています。
しかし断水が始まると、水道から出なくなるのは飲み水だけではありません。
洗面。
手洗い。
調理。
洗濯。
そしてトイレ。
普段は蛇口をひねり、レバーを押すだけで成立していた生活が一気に変わります。
中でもトイレは、毎日必ず発生します。
しかも家族全員分です。
だから防災用品を見直すときは、
「携帯トイレを持っている」
だけで終わらせず、
何人で使うのか。
1日何回くらい必要なのか。
何日間を想定するのか。
使用後をどこへ保管するのか。
排水設備が使えない場合にどうするのか。
ここまで考えておきたいところです。
食料が尽きる前にトイレが尽きる。
そんな状況は十分考えられます。
防災備蓄で本当に怖いのは、何も準備していないことだけではありません。
準備したつもりなのに、実際に家族で使ってみると一日や二日しか持たないことです。
水と食料の横に、
「家族人数×5回×日数」
で計算した災害用トイレを置いてみる。
それだけでも、断水時の在宅避難はかなり現実的なものになります。